
歌舞伎町というと東海地区に住む人はどんなイメージを持つのだろう。
中国マフィアの巣窟と答えた人もいれば、
風俗街の多い街と答えた人もいた。
警察の24時間を追うドキュメンタリーなどで、北海道のすすきのや大阪の道頓堀と一緒に出てくる場所というユニークな答えをくれた友人もいた。
僕は大学を出てから東京に20年ほど住んでいた。
新宿から一駅程度の場所に住んでいた時期が長く、
現在も東京出張の際は、その辺りに滞在しているので、
歌舞伎町というと生活圏内になってしまう。
よって今一つ歌舞伎町を俯瞰で見ることができない。
若い頃に比べれば、あまり行くことはなくなってしまったけれど。
ある雑誌の連載取材で久しぶりに朝の歌舞伎町を歩いてみた。
歩いているうちに身体も冷えてきたし、お腹も空いてきた。
どうせだったら喫茶店にでも入ってみようと思ったのである。
ファミリーレストランではなく喫茶店。
階段の前に置かれた昭和を感じさせる埃だらけのショーケースに少し不安を覚えるかもしれない。
しかし、2階に上がり、入口を入ると予想以上の眺めに
「おぉ~」
と思わず声をあげるだろう。
ガラス越しに歌舞伎町一番街のストリートが見渡せるのだ。
しかも靖国通りを渡ったヤマダ電機の大型スクリーンまで一直線に。
以前、コマ劇場(現在、工事中)の前にマクドナルドがあり、その2階の窓から歌舞伎町の街を眺めることが好きだった。
しかし、昨年の5月に閉店になってしまい、今はカラオケボックスになってしまったので、その景色を楽しむこともできなくなってしまった。
そういう意味では、この喫茶店の存在は嬉しい。
白シャツに黒いパンツの若い男性がモーニングセットを運んでくる。
夜のホストの仕事をしているといってもおかしくないような雰囲気。
歌舞伎町という頭で見ているので、そう見えるだけかもしれないんだろうけど。
バターが溶けない程、トーストは冷めていたが、
この景色を堪能しながら朝食がいただけるだけで幸せに思う。
それでも窓際に座っているのは僕ともう一人のテーブル状ゲーム機に勤しむ中年男性だけ。
夜勤明けらしき、濃い化粧の女性は光を避けるように奥の席に座り、
煙草を吸いながら、スマートフォンでメールを送り続ける。
やはり夜の仕事の匂いがする男性二人組も光の入ってこない場所に座り、週刊漫画を読みふけっている。
ギターを抱えたバンドマンが飲み疲れたように座り込み、
酔っぱらってご機嫌なカップルがよろよろと歩いていく。
どこか不健康な香りが漂う街である。
魑魅魍魎な雰囲気が漂う街である。
どこか憎めないような可愛らしさも併せ持つ街である。
それが歌舞伎町の街だと僕は思う。
