
昨年、名古屋駅が発売した織田信長をテーマにした駅弁が好調なのだそうだ。
その名も「信長膳」。
亡くなる寸前の1582年。
武田討伐に功績のあった徳川家康を招いて、
安土城に招いた際の晩餐を再現したものである。
ふと思い立って買ってみようと名古屋駅に立ち寄ったのだが売り切れ。
仕方なく西口のビッグカメラに立ち寄り、
切らしていたプリンターのインクを購入し、
自宅に帰ろうと駅に戻ろうとしたときである。
ふと、名古屋駅のビッグカメラより西を歩いたことがないことに気がついた。
そう思って、歩き始めるとすぐに、
1980年代、若松孝二監督が立ちあげたシネマスコーレが見えた。
僕は高校卒業してから東海地区を20年以上、離れていたため、
名古屋の映画館は、ほとんど知らない。
しかし、このシネマスコーレだけは東京でも噂には聞いていた。
アジア映画、日本映画、インディーズ映画を中心に上映している興味深い映画館である。
ちなみに僕が訪れた日は塚本晋也監督の「鉄男」が上映されていた。
更に西に歩いていくと、
駅から歩いて3分程度の場所に椿神社が現れる。
そして、ここから駅西銀座が始まる。
立地条件で言えば、素晴らしいのだろうが、
見事なほどのシャッター通り。
その中で営業する店がぽつりぽつりと現れる。
懐かしい狸の陶器が置かれた蕎麦屋、
女性アイドルがずらりと並んだプロマイドショップ、
愛知県麺類会館などという不思議な建物、
レトロ感あふれる銭湯...
もちろん喫茶店もある。
駅西銀座が終わるところに二店舗、
道を挟んで向かい合うように営業している。
直感で選んで一軒の方に入ってみる。
パリッと折り目のついた白いワイシャツに蝶ネクタイの男性がカウンターの中に立っている姿が見えた。
きっと何十年も、このスタイルでやっているのだろう。
窓際の席に座りメニューを眺める。
ピラフに目が留まった。
「喫茶店っていうとさぁ、俺はピラフのイメージがあるんだよなぁ」
僕と同じ大学時代出身の友人が、以前、そう言っていたことを思い出した。
僕が通っていた大学の近くにピラフの大盛りの量で知られていた喫茶店があったからだろう。
そういえば、この連載を始めて約一年経つが、
ピラフを頼んだことがなかった。
この店のピラフは「美味しい」というより、「うまい」といった方が近かった。
喫茶店を出て、駅に戻る途中、
商店街の向こうに「JRセントラルタワーズ」が見えた。
高さ245メートル。
ギネス・ワールド・レコーズに登録されている世界一高い駅ビルである。
しかし、この商店街から見ると不思議な光景である。
北京や上海、成都など開発ラッシュで湧く中国の大都市にいるような感覚で名古屋駅まで戻っていった。
そういえば、今回、信長は憑いてこなかったなぁ。
まぁ、こんな日もあるだろう。
「信長膳を見たかったのぉ」
おっと、憑いていたようだ。
信長膳は、いずれ紹介するよ。
