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信長さん、喫茶店行こまい
「車のナビゲーションシステムにあだ名をつける(三重県鳥羽市)」
2010/07/17/08:49

僕はナビゲーションシステムと相性が悪い。
二年前まで乗っていた車のナビゲーションシステムは、
何度もリルート(案内された道と間違った場合、再度、道順を検索しなおす機能)しているうちに、
混乱してしまい、パソコンで言うところのフリーズすることがあった。
フリーズした後、なぜか必ず目的地は五反田(東京都品川区)になっていた。
よって、僕はこのナビに「五反田マニア」と名付けていた。

この連載を始めた頃、
大学時代の友人とご飯を食べた後、
信長と斎藤道三が会った聖徳寺に連れて行ってほしいとお願いして、
彼女の車のナビゲーションシステムに行き先を打ち込んだのだが、
なぜか八事霊園に迷い込んでしまった。
「こんなこと始めてなんだけどなぁ。
イシコ、何か変な電波でも出しているんじゃない?」
僕は何も言えなかった。
確かに僕が使う電化製品はよく壊れる。

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そして、前回、志摩市麦崎灯台で日の出を拝んだ後、
岐阜の自宅まで車で戻る途中、
鳥羽市で鳥羽城跡に立ち寄ってから帰るつもりでいた。
尾鷲市を散歩した際に触れた信長に仕え、その後、秀吉に仕えた水将「九鬼嘉隆」が築城した城である。

しかし、鳥羽市に入った途端、
ナビが指示した右の脇道に入っていくと、
「リルートを開始します」
というアナウンスが流れた。

「おいおい。リルートって、あんたが指示したんだよ」
そうナビに向かってつぶやいている間にも車は、どんどん直進していく。
山道に入り込んでしまったようでUターンなどできない。
ナビは「リルートを開始します」という言葉を連呼するばかりである。
ナビの地図に登録されていない道を走っているようだ。
その山の中に寺のマークが見えた。

もう、こうなったら寺まで行ってしまおうと腹をくくり、
車の気配のない細い道をどんどん登って行った。
登り始めて10分程度、経っただろうか。
不思議な立ち方の木々の向こうに立派な塀が現れた。
「青峰山正福寺」なる真言宗の寺だった。

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8世紀、聖武天皇の勅願により、
行基(ぎょうぎ)が開いた歴史のある寺のようだ。
説明板を読んでいると登ってきた山は、海上守護の霊峰として知られる青峰山らしい。

江戸時代に造られた山門をくぐり、
中に入って参拝を済ませると、
駐車場でUターンして何とか元の道まで戻ってきた。

するとナビゲーションシステムのご機嫌もなおり、
その後はスムーズに鳥羽城まで連れて行ってくれた。
この城は、正門にあたる大手門が海側に突出して築かれたため、
鳥羽の浮城と呼ばれていたらしい。

「そんなことどうでもよいわい。
はよ。喫茶店行こまい!」
憑いた信長にせかされるように、
鳥羽城を早々に引き上げ、
鳥羽市街の喫茶店に飛び込んだ。
ホットコーヒーに100円プラスしてトーストと卵をつけてもらう。

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物静かな女性主人は、メダカマニアだった。
メダカ好きの客が来ると、急にイキイキして話し始め、
延々、メダカ談義が続いていく。

メダカは重力で方向を認識しているので、
宇宙のような無重力の中にいると方向感覚を失い、
ぐるぐる回転してしまうのだそうだ。

ふと、青峰山は無重力だったのだろうかと馬鹿げたことを考えた。
喫茶店を出て、車に戻ると、僕はナビに「メダカ君」と名付けた。

PROFILE

イシコ
1968年岐阜県生まれ。静岡大学理学部卒業後、女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を経て、(有)ホワイトマンプロジェクト設立。国内外問わず、様々な分野から参加するイシコの友達が白塗りをして、子供向けのショー、映像制作、本、ワークショップなど様々なコンテンツを生み出していく。2008年からは世界の一都市一週間のペースで滞在する「セカイサンポ」をスタートさせ、2009年3月「セカイサンポ2」まで終了。ここ数年は執筆活動が多く、機内誌、新聞、WEBなど様々な媒体にエッセイ、ブログを寄稿している。